−昇る龍−十四話「一人じゃない」

龍也は殴りかかる直前で強烈なバックステップを踏んだ

榊が抱えていた鉄板には大穴が空き
その先には小型大砲の如き真炎の握り拳があった

「おーこわ、工業用鉄板パンチで穴空けるたぁ、人間か?」
そこまで言うと榊は鉄板を投げ捨てた
近くに強烈な雑音が響く

「榊さん、あんたの出しゃばる所じゃない」
真炎は榊の事を知っていたようだ、それもそうだろう、真炎は氷室の部下なのだから

瞬間、真炎から冷ややかな殺気が放出された
龍也は思わず後退りした
もう龍也の目に燃えるような、強い闘気は皆無だった

「なぁ、真炎ちゃん」
榊は殺気に気圧される事も無く、流暢に話し始めた
「そろそろ帰ってくれねぇか?老体にはちとキツいぜ」
榊が笑いながらまるで古くからの友人に話しかけるように話した

「何であんたの・・・」
そこまで言うと真炎は一歩、後ろに下がった
まるで、先程の龍也のようだ
だが、榊から強い殺気が出ている様子は無い
むしろ、暖かな包容感があった
何なんだ、この時間は
時間の感覚が無い、一秒がわからない
まるで、バトル漫画の一コマのようだ

龍也は軽いパニックだった、訳がわからない
すると、榊が口を開いた
「真炎、一度しか言わん、氷室の下へ帰れ」
榊は先程のように「真炎ちゃん」とは呼ばなかった
そして、その言葉には有り得ない威圧感があった

真炎は右足を軸にクルッと回り
無線機を取り出し、二言、三言喋ると今度は左足を軸にクルッと回って龍也と榊の方を向いた

そして、先程より低い声で、言った

「強化人間は俺一人じゃない、ついて来なかった事を後悔しろ」

そこまで言い放つと、彼方より飛来した音速の戦闘機に乗り込み

彼方へと、消えて行った

まだ、戦闘機の爆音が残る校舎裏、榊が口を開くまで龍也は一ミリも動かなかった

「まあ、取り敢えず神社に行こう、皆避難してる」
榊は笑顔で龍也をオートバイの後ろに乗せて神社に向かって走って行った



一時間後、とある高層ビル
「榊が、現れましたか」
氷室は薄笑いを浮かべ、受話器を持ち上げた

「真炎が、失敗りました、貴方の力を借りましょう」

氷室は早口で言うと、ひじ掛け椅子にドカッと座り、煙草に火をつけた

「榊ィ・・・」
氷室の目の中の、暗い憎悪の炎が、豪炎と化した・・・
















    続く













今回は、次の話に繋げる、繋ぎの章にしました

因みに、「失敗り」は「しくじり」と読みます


ウム・・・KTさんが考えてくれたデッキに必要なカードが中々集まらない・・・

近くのカードショップにでも、行って来ます

まぁ、今日はココまでで